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2027年リニア開業困難に

リニア中央新幹線の着工をめぐり、JR東海の金子慎社長と静岡県の川勝平太知事が6月中にもトップ会談に臨む見通しとなった。環境問題を理由に準備工事に難色を示す県とJRの溝は深い。会談が平行線のまま終われば2027年のリニア開業は困難となり、総工費約9兆円の国家的プロジェクトは軌道修正を余儀なくされる。


 川勝知事は11日、静岡市内の工事予定地周辺を視察し、「なし崩し的に(トンネル)本体工事につながる」と準備工事の了解に難色を示す一方、金子社長との会談に応じる考えを表明した。菅義偉官房長官が同日の記者会見で、27年開業実現へJR側に「最大限の努力」を求める中、計画の行方は両トップの膝詰め談判に委ねられた。


 知事は16日に周辺自治体の首長とテレビ会議を行い、地元の意見をまとめた上で会談に臨む方向。トップ会談の日程は未定だが、JR側は27年開業には6月中の開催・合意が必要と主張している。

 

東京・名古屋・大阪を最高時速500キロで結ぶリニア建設の難関工事、3000メートル級の山脈を貫く南アルプストンネルの静岡工区(8.9キロ)は昨年5月、準備段階で県の了解が得られず中断した。地元自治体がトンネル掘削工事による大井川の流量低下などを懸念しており、県とJR側の協議は手詰まり状態に陥っている。


 開業遅れへの懸念を繰り返し表明してきた金子社長は5月末の会見で「6月中に準備工事を再開できなければ、27年の開業は難しくなる」と時期的な区切りを明言。10日には「(6月に再開しても)ぎりぎりだ」と述べ、焦燥感をにじませた。


 一方、川勝知事は「開業を遅らせる理由があるとすれば、JR自身の胸に問えと言いたい」と反発。環境問題の解決に加え、JRの費用負担で工事現場につながる林道を完成させるよう求めている。


 開業から半世紀余が経過した東海道新幹線を補完し、日本の大動脈を超高速で結ぶリニア計画。開業予定が狂えば、約9兆円を見込む総工費はさらに膨らむ可能性がある。