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今できる事を取り組む方法

家で学習を進めるコツ

そこで、今回は「家でできる大人の学び直し」というテーマで、家で学習を進めるコツをお話しします。ここでは主に(受験勉強ではなく)大人の教養のための学び直しに焦点を当てていきます。

大人の学び直しについて、学習を進めるポイントは3つです。まず1つ目。家で集中できる環境を作ることです。

通常、家というのは自分にとって最も心地よい場所です。好きな漫画が散乱し、飲みかけのコップもダイニングテーブルにおいてある。そんな方も多いのではないでしょうか。でも、集中して勉強するには、そうした「自分にとって心地よいもの」を目に入れないことが重要です。

脳は、目についたものをとにかく気にしてしまうようにできています。専門的にはディストラクションという言葉になりますが、目の前にあるもので気が散ってしまうのが人間の常です。

そこで、まずは片付けをするのが重要です。片付けといっても、単に漫画を本棚に、おもちゃをおもちゃ箱に入れるだけでは足りません。「自分の目に入らない」ようにするのがポイントです。

漫画であればクローゼットの中に入れてしまい、見えないようにします。おもちゃであれば棚に入れて、これも目に見えないようにします。スマホもタブレットも、とても中毒性のある機器で、ディストラクションの最たるものですので、集中したいのであれば目の届かない場所に置きましょう。

そうすることで、まずは目の前のことに集中する環境を作ることができます。机の上はさっぱりとして、見えるものは壁とカーテンくらいしかない、これが理想的な学習環境といえます。

やりたいことをやる

次に2つ目。これは、興味のある分野の情報を濫読すること、すなわちたくさん頭に入れることです。ここは少し丁寧に説明が必要なので、何を学ぶべきか、という話からしていきます。

学び直しの対象は、せっかくの機会なので、やらなければならないことではなく、やりたいことにしましょう。

「会社から言われているから」「今のご時世やらなければならないから」という理由で学ぶ対象を選ぶと、その時点ですでにイヤイヤ選んでいることになるので、楽しむことは最初から難しいです。楽しめなければ学習など続くはずもありません。

そうして学ぶ対象を「やりたいこと」の軸で選んだら、その分野の情報を濫読するのがおすすめです。情報というのは主には書籍、そうでなければ動画やウェブの記事などを指しています。

何か興味のあることを学習するときには、いろいろな角度から記載された情報をインプットするのが早いです。

受験勉強の場合には「1冊を完璧に」が正解なのですが、大人の学び直しにおいては「何冊もざっと」が正解です。さまざまな角度から学習対象を知ることで、よりその分野の理解度が上がっていきます。

私の例で言えば、行動経済学に以前から興味がありましたので、何冊か本を購入しました。とりあえず1冊、ではなく何冊か買ってしまうのがポイントです。

著名なダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』だけ読めばいいのでは、と考える人もいるかもしれませんが、新分野の学習の場合には、全体像をそもそも理解できていないので、濫読によって全体像をざっとつかんでしまうほうが理解が早くなります。

最後の3つ目ですが、これが最も重要です。アウトプットすることです。アウトプットと一言でいってもやり方はさまざまです。

受験勉強でいえば、問題を解くことがそれにあたります。でも、教養のための勉強の場合、問題を解く、ということは通常ないので異なるアウトプットの方法が求められます。

私がおすすめしたいのは、家族など近しい人に話すこと、そして紙のノートにメモをとることです。肩肘を張って「アウトプットしよう!」などと構える必要はなく、気軽にアウトプットできる方法で構わないのです。

家族に話す場合には、「今日読んだ本に書いてあったんだけどさ……」といった形で気軽に話を始めることで「え、それって、どういうこと?」のような質問が返ってきますのでそれに答えているうちに自分の理解が深まっていきます。在宅で家族全員が家にいる時間も多くなっているでしょうから、アウトプットを通じて家族との交流と自分の勉強を兼ねてしまうのは一石二鳥です。

紙のノートにメモをとるのもOK

一人暮らしで回りに家族がいない、という場合には、紙のノートにメモをとることでもアウトプットの役割は果たせます。

いつもはパソコンやスマホでメモを取っているという方も、今は紙のノートを活用することがおすすめです。なぜなら、在宅勤務をされている方の場合、運動量が減る代わりにパソコンの前にいる時間が増加しており、プライベートで勉強している時間にもパソコンを使うとデジタル疲れしてしまうからです。なぐり書きで構いませんので、紙のノートを使ってみてください。

私も普段はスマホやパソコンでメモを取るのですが、さすがに自分の勉強の際にまでデジタル機器を使うのに疲れてしまい、紙のノートに、文字どおりなぐり書きするようにいろいろとメモを取っています。

手書きの利点は、思いついたものや気づいたことを自由自在にスペースを使って、文字や図や矢印などを用いて書くことで頭の整理がしやすい点にあります。実際やってみると、その効用に気づくと思います。

以上の3点です。こざっぱりと整理された部屋で、興味ある分野の情報を濫読し、周りの人やノートにアウトプットする、こういったことで家での学び直しは確実に加速します。

ポストコロナの生活様式では、家にいることも増えてくるでしょう。この機会にぜひ家での学び直しのコツをつかみ、「あー、前から興味あったんだけど、あれやってみよう」と思う学習対象を探して、新しい自分に出会いましょう。