テイクアウト・通販の注意点(飲食業)

消費者も3月までは行きつけのお店に足繁く通い、「飲んで経済回して、お店を応援するよ!」なんて応援をしてくれたのも遠く昔のことのよう。4月に入ると特に都心部の店では売上昨年対比半分以下は当たり前に。緊急事態宣言による“stay home”は、まさに地獄への扉であった。

その後は嘆き諦めムードの人と、必死に生き残り策を実行に移す人に分かれてきている。ネット上では「食べて飲食店を応援しよう」という通販や、未来の食事券を売るサイト、在庫や賞味期限の迫った商品を「訳アリ商品買って応援」など、外食産業には温かい声とサービスも出現した。

 

そんな中、外食産業専門のコンサルタントである筆者は、あることに引っ掛かり、危惧している。飲食店が生き残りをかけてチャレンジし、行動に移している「テイクアウト」「デリバリー」「通販」がそれだ。

「お家で焼肉セット」はNG?

当然この苦難の最中、すぐに行動を起こせる飲食店への尊敬と賞賛の気持ちもある。しかし、「法令違反だらけ」の実態に関しては看過することはできない。

なので、この飲食店のあらゆるチャレンジが今後長期化が予想されるコロナショックの渦中で継続的に成長を見せるためにも、応援の意味でもあえて指摘していきたい。

そもそも飲食店は、「飲食店の営業許可証」の下、通常は営業している。その範疇で、テイクアウトやデリバリーを実施することは何ら問題ない。では、何が問題になるのだろうか。

例えば、焼肉店(飲食店の営業許可証のみ取得している)の場合。「焼肉弁当」はOKだ。しかし、「お家で焼肉セット」「アラカルトのメニュー単品」はNGとなってしまう。これは一体、どういうことなのか。

食品衛生法により、飲食店の業務は細分化されており、上記の場合も飲食店の業務から外れたものが混ざっているのである。この法律ももちろん「消費者に安心・安全」に暮らすために作られているわけだ。

飲食店がテイクアウト・デリバリーでできる定義は、「そのもので一食の体を成すこと」。もう少し説明すると、おかずがあり、ご飯があるお弁当状態のものを指す。

つまり、「アラカルトのメニュー単品」のように、おかずだけを販売してしまうと、「惣菜製造業」という違う業種の申請・許可が必要になる。また、「お家で焼肉セット」も生肉を販売する以上、「食肉販売業」に、場合によっては「食肉製造業」に当たるケースも出てきてしまう。

易な「お弁当」販売は危険

コロナショック後、筆者は保健所に確認のため、問い合わせの電話で質問をさせていただいた。やはり、この見解で間違ってはいないようだ。

しかし、保健所もこのコロナショックの状況下、「皆様大変な時期なので、すぐに指摘・指導とは考えておりませんが、何らかの形でこの法令に関する知識を認知していただきたい」との話を聞いた。

 

筆者は表現は悪いが、法令以上に危惧していることがある。それは飲食店は「温かいものは温かく提供、冷たいものは冷たいまま提供」という鉄則がある。一方、「お弁当」に関しては、温かいまま盛りつけ蓋をして陳列することは多大なるリスクなのだ。

特にこれからの時期は気温も上がり、食中毒リスクが上がる。飲食店としての各々の知識・経験がプロであったとしても、「お弁当」を商売にすることに関しては素人が多いのが実態だ。

町のお弁当屋さんに行くと、注文してからご飯等を盛りつけ、蓋をする。現状テイクアウトデビューのお店のお弁当の多くは、作りだめしたものを陳列している。これだとすぐに提供できるが、一方でリスクもある。しっかり蓋をする前に、“熱”を取らなければならないからだ。

通販も法令違反だらけ

通販に関しては、より法令違反が横行している現状だ。そもそも飲食店としての営業許可だけでは通販自体がNGである。まずは食品販売業の申請が必要になり、そして内容にもよるが食肉販売業、魚介類販売業、乳業販売業など細かく規定が存在する。

さらには、「冷凍品」「冷凍食品」と謳ってしまうと、また別の法令違反が重なる。ここには「冷凍冷蔵業」の許認可が必要となってしまうのだ。それどころか、「食品表示法」すらクリアできていないものも多い。

このコロナショックを生き抜くための手段であることは理解できる。しかし 、飲食店同様、「お客様の健康・安心・安全」を守ることは責務なのである。今からでも構わない。分からなければネットで調べ、保健所に問い合わせし、学び対応しなければならない。

ちなみに、一般的な飲食店営業許可を取得していれば、「販売業系」の許認可のハードルはそれほど高くない。一方「製造業系」は製造室(個室)を必要としたりと、少しハードルが高くなる。

新規での申請をしないのであれば、現状の飲食店営業許可の範囲でやっていいこと悪いことを理解する必要がある。そして「『弁当』とは?」を初心者のつもりで学ばなければ食中毒リスクが高い弁当が世に横行することとなる、というより現状、横行しているのだ。

驚くほど保健所は親切だ。懇切丁寧に教えてくれる。このコロナショック後も本当の意味でお客様に応援されるお店として生き残ろうではないか。