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オンライン面接でのコツとは

コロナ就活で企業も苦戦している

昨年4月、経団連と大学が2021年春以降の新卒採用について、年間を通して採用活動を行う「通年採用」に移行していくことに合意したことが話題になりました。

これまでは、「新卒一括採用」という形がとられてきました。わかりやすくいうと、採用活動を3月情報解禁、6月面接試験の解禁という横並びの日程で進める方法です。今年はまだ移行期間で、従来のスケジュールを踏襲しようという政府方針が示されたこともあり、多くの企業もこの考えを受け入れていました。新型コロナは、この移行期間に直撃したのです。

まさに、これからが就活本番と意気込んでいた学生たちにとっては、大きなダメージとなっています。経団連はウェブ説明会などの企業説明の機会の創出、エントリーシートの提出期限の延長、オンライン面接の推進、年間を通じた複数回の選考機会の確保という具体的な方策を示し、第2の就職氷河期を作らないという強い意志を示しています。

マイナビが行った企業調査では、2021年卒の採用予定数は「当初の予定通り」という回答が82.6%を占めています(「新型コロナウイルスに関する企業の新卒採用への影響調査」2020年4月22日)。各社、オンラインでの採用活動や試験の日程を後ろ倒しにするなどの工夫をして、通常の採用数を目指しているようです。

就活期間中に、突然降ってわいたような新型コロナのため、今年の就活は、過去のものとはまったく違った形態になってしまいました。「密閉、密集、密接」の3密対策が求められる中で、対面での採用活動はオンラインでの対応に切り替えられています。

これまで一部のビジネスパーソンの間では活用されていた「Zoom」が脚光を浴び、多くの人々に急速に広がっています。こうした変化を余儀なくされた企業側も、ウェブ説明会やウェブ面談などを全面的に押し出した採用活動になっています。

企業の採用担当者からは、こうした声が上がっています。

「従来であれば、筆記試験後の会場での態度や、面接試験時に控室でどのようにスタッフに対応しているか、ほかの受験学生とどのような会話をしているかまで見ている。ウェブ筆記や面接では、そのような細かなしぐさを見られないのが残念。さらに、接続などの問題で、テンポよく多くの就活生の面談をすることが難しくなる。はじめから人数を絞らなければならず、書類からは判断できないが、会って話を聞いてみたいという人を多く落とさざるをえない」(サービス業)

「1次選考はグループディスカッションでコミュニケーション力を見る予定だったが、やむなく中止に。グループディスカッションでは、入社後に組織の中でどのような役割を担える人材かがイメージしやすいので、取りやめになったのは残念だった」(広告業)

企業側はもとより学生も、この変化にかなり困惑しています。学生側も企業側もこの新しいオンライン就活に早く慣れることが求められます。しかし、よく考えるとこのオンラインを活用した就活の可能性は大で、新型コロナ終息後もオンラインによる就活は、時代に即した形になりながら、定着していくと思います。

就活のニューノーマル

オンラインを使った就活は、企業と学生の双方にメリットがあります。企業側から見れば、従来の説明会と比べて時間、費用、労力が削減できるところが大きいです。また学生側から見れば、ウェブ説明会は、全国どこからでも参加することが可能なので、学生は移動費用(交通費・宿泊費など)、移動時間、移動のための労力が節約できます。

さらに、企業側にとってのメリットは、地方の大学に通っている優秀な学生にまでアプローチを広げることができることです。これまでは地方に就職していた学生も、オンライン就活で活動範囲を広げられるので、さらなる可能性が広がります。

ZENKIGENが学生に向けて行ったアンケート調査でも、ウェブ面接のメリットについて「移動時間が減る」(80.7%)、「移動費用が減る」(70.6%)、「好きな場所から参加できる」(51.3%)という結果が出ています

就職活動にかかる費用についていえば、昨年の就活生の平均負担費用は13万円を超えるという調査結果が出ています(「10月1日時点の就職活動調査 キャリタス就活2020学生モニター調査結果」2019年10月発行)。総額が最も高いのは北海道で23万3525円、最も低いのは関東で11万3868円と、10万円以上の開きが出ていることからも、地方の人の負担が大きさは相当なものです。交通費や宿泊費の負担が減ることは、地方の人にとってはチャンスと言えるでしょう。

オンライン面接で優秀な人を見抜くポイントは、企業側が、どのような学生を“優秀”だとみなすかという明確な定義を作ることが必要になります。

例えば、コミュニケーション能力の高さを求める場合であれば、コミュニケーション能力のチェックを軸にした質問を考える必要があります。また、ほかの要素であれば、求める要素を見極められるような質問を用意する必要があります。前提として、企業側もこれまでとは違った“オンライン面接用の対応”をしなければなりません。

ポイント4つは?

最大の見極めポイントとなるのは、①即戦力となって長く働き続けてくれるか、②自社の成長に貢献できるか、③いずれは会社の中核を担うような存在になるか、④ほかの社員のお手本となってくれるような存在になるかという4点です。

ただし、通常の面接であっても、オンライン面接であっても、基本は同じです。まずは、自社の社風や雰囲気に合っている人物か否かを見極めること。次に、学生自身の中長期的な目標を確認すること。そして、学生の人物特性(性格や価値観など)を見極めることです。人物特性を見極めるには、4つのポイントを注視すればわかります。

1.  人の話を素直に聴くことができるか
2.  人や物事に対して正直な対応ができるか
3.  目の前のことに真摯に向き合うことができるか
4.  トラブルに対して強いメンタルを持っているか

ということです。

とくに、機器の接続不具合やタイミングのズレなど、オンライン面接特有のアクシデントにいかに上手く対応できるかは、学生のトラブル対処を見極められる大きなポイントです。

対面と違い、立ち居振る舞いや学生の雰囲気から得られる情報が少ないのもたしかではありますが、オンラインの面接を取り入れることで、いままでの方法では出会う機会のなかった人材を発掘できる可能性もあります。

動画やライブ映像などの新たなツールを使用する採用方法は、企業側が用意した面接会では発揮できない就活生たちの「自己演出力」などの魅力を見つけるきっかけにもなります。

例えば、カメラに映る自室の背景に配慮するなど、見る側がどう受け取るかを想像しながら最大限の「演出」ができている学生は、この面接を大切にしているという強いメッセージを企業側に与えることができるでしょう。採用側も、その学生が組織の一員となった時に、いかに仕事の準備を丁寧に行えるかを見抜くヒントとなることが期待できます。

企業と学生の両者が、この大転換を前向きに捉えることができれば、オンライン面接は新たな人材を獲得する有意義な「就活のニューノーマル」となるでしょう