アフターコロナの飲食店復活の道

最初のリハビリ段階はテイクアウトです。お店の中で食べてもらえる顧客は少数派だという事情からランチタイムにお店の前に従業員がひとり立ってお弁当を売っているお店が散見されます。大半の消費者はテイクアウトから復活するという点ではこのサービスは正しいです。

店員が手袋をはめていないお店への不安

ただ完璧に見えた、あるお店を例にとって気づいた改善点を3つ指摘しましょう。私が実際に見かけたお店です。

かなりいいところまでいっていたお店だったのですがミステリーショッパー的に気づいた点のひとつめは店頭の従業員が手袋をはめていなかったこと。手袋ははめたほうがいいです。後述する理由から気休めなのですが、手袋をはめているだけで顧客は安心します。それが重要なのです。

2つめにお弁当の価格が580円。これはいただけません。お得感を出したいのかもしれませんが、キリのよい600円のほうがいいです。理由は端数だとお釣りがたくさん出やすいから。580円に対して1000円札で会計すればお釣りは420円。100円玉が4枚と10円玉が2枚。硬貨を用意して600円を払っても10円玉2枚のお釣りが出てしまいます。

実際のところはわかりませんが、人と人の手を介してやり取りされていく現金には、ウイルス感染のリスクを排除できません。その知識を持ってしまっている顧客にとってこうした端数によってお釣りがたくさん出るような価格設定はマイナスに見えます。手袋をはめた従業員から感染しないとしても前の人が渡した現金が自分に回ってくるのはリスクだと考えて、それを避ける人が実際にいるのです。

上記の理由から3つめにキャッシュレス決済の導入が求められます。これは意外と簡単でお弁当を置いた台の上にQRコードを用意すればいい。実は現金を嫌う人はQRが使えるお店を選んで利用しています。ほんのちょっとの手続きで簡単に導入できる時代なのですから飲食店としてその準備は重要だろうと思います。

テレビやネットなどでニュースをさんざん見ているせいで顧客はコロナについていろいろな知識を持っています。店内で密にならないように座るとか、対面で座らずに横並びで座るようにといった厚生労働省の広報もされています。

知識としては飛沫よりも指先という話をしましたが、いちばん危険なのは実はテーブルで、その次がドリンクバーのパネルだそうです。トイレのドアノブも危ないという話もありますが、ポイントはそういった知識を持っている顧客がたくさんいるということです。

私が店内で飲食したお店でいちばん「いいな」と思ったお店の話をします。

席に通してもらう際に、入り口で手をアルコール除菌してもらったうえで、案内してもらった席に座ったら私の目の前で除菌スプレーとダスターでテーブルを拭いてくれた店がありました。顧客目線で説明すると、前にいた顧客からの感染リスクをこれで気にしなくてもよくなるという点で良いサービスです。

オーダーはタッチパネルで行う店なのですが、タッチパネルも目の前でひと拭きしてくれました。医師のような専門家には、ひと拭きでウイルスを除去できるかという点に別のご意見があるかもしれませんが、このちょっとした動作で安心度は変わるものです。

席は疎になるようにひとつおきにテーブルの上にバッテンマークが置かれていたので、隣に誰かが座るかどうかを気にしなくてすみました。普段であればテーブルの上に置かれている漬物のツボは撤去されていて、そういったものは料理と一緒に配膳されてくる仕組みに変わっていました。

支払いもキャッシュレスで、お店を出る際には店頭のアルコール除菌で手を消毒して安心して帰ることができました。あくまでコロナが収束に向かう今だからこそということですが、少しでも顧客に来てもらうためにこのお店が知恵を絞ったことがうかがえます。

さて、結局この話、どこが重要なのでしょうか。緊急事態宣言を受けた外出自粛の効果もあって新規感染者数は減ってきています。まだまだ油断大敵と言えますが、いずれは緊急事態宣言も解除されるでしょう。新型コロナウイルスが高温多湿、日光には強くないという研究結果も伝えられており、これから6、7月になると医学的にはコロナ感染は急速に収束していく期待もあります。

慎重派の顧客をいかに早く呼び戻せるか

しかしマーケティング的には街に人が戻ってきても飲食店を安心して使ってくれる人の数は、最初はそう多くないでしょう。マーケティング用語でいうアーリーアダプターぐらいまでの合計16%の顧客はそれでも6月あたりから飲食店に繰り出すでしょうが、重要なのは慎重派の顧客をいかに早くお店に呼び戻せるかの施策なのです。

飲食店にとって朗報なのはマスクバブルが崩壊してマスクが手に入るようになったのと同時期に、アルコール不足も解消されてきて除菌用のアルコールも価格が下がって入手しやすくなってきたことです。

あとは飲食店の工夫次第の勝負になります。この先、緊急事態宣言が解除され、感染のピークが過ぎたとしても、警戒を緩めていない顧客が世の中の過半数に上ることを念頭においた工夫が必要になるのです。