いよいよ【iphone SE】発売

アップルは4月24日、iPhone SE(第2世代)を発売する。通常、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの各社からも同時に発売されるが、新型コロナウイルスの影響から、発売が5月11日に延期された。オンラインのアップルストアでは、SIMロックフリーモデルが4月24日に発売され、4月27日以降の配送が案内されている。

iPhone SE(第2世代)は、iPhone 8のハードウェアデザインにiPhone 11のプロセッサーであるA13 Bionicを搭載しチューニングした製品だ。

価格は4万4800円~に設定されており、価格の面からはミドルレンジに属する。言い換えれば、ミドルレンジのスマートフォンに、ハイエンドのチップを搭載するという、競合にとっては採算性の問題から取り組めない、特殊な製品を作り上げたことになる。

人気モデルになる「3つの理由」

もちろんアップルに対する期待は、ハードウェアのデザインとシンプルな使いやすさであり、2世代前のスマートフォンのデザインをそのまま採用している点で、デザインの新しさという価値はない。ただし、iPhone SE第2世代は、3つの理由から人気モデルになる可能性を秘める。

1. 小型のスマートフォンを好むユーザーにとって、iPhone SEは新たに発売されるモデルで最もコンパクトな4.7インチサイズに留められている。もっとも、初代iPhone SEは4インチサイズで、そのサイズでの刷新を求める声も存在している。

2. 新型コロナウイルスの影響で世界中の人々がマスクを常時着用していることから、顔認証が難しくなった。そのため、マスクをずらさなくてもロック解除が可能な指紋認証のTouch IDに再評価が集まっており、結果として古い機能Touch IDを採用するiPhone SEが好まれる。

3. 同じく新型コロナウイルスの影響から世界的に支出を抑える傾向にある。そこで最新のパワフルなプロセッサーを備えながらもミドルレンジの価格に抑えたiPhone SEは、多くの人にとってよい選択肢に映る。

これらのポイントから、iPhone SE第2世代は生まれながらにして、一定のポジションを確保しているように思える。特にスマートフォンをキャリアで初めて購入する場合、下取りを前提として2万円という割引幅の上限を活用することで、64GBモデルの価格は2万5000円を切るのだ。

実際に手にとった使用感から、3つのポイントで見ていこう。

筆者は比較的手が小さいほうで、iPhone Xが5.8インチへと拡大されて以降、スマートフォンを落とさないよう、必ず両手で操作するようになった。初めから両手が前提なら、画面が大きいほうがいい、と6.5インチのiPhone XS Max、iPhone 11 Pro Maxを選んできた。

そうした経験があったため、4.7インチ、横幅が67.3mmというiPhone SEのサイズは片手でしっかりと握ることができるものだった。148gという軽さもまた、うれしい体験となった。iPhone 11 Pro Maxは226g。その差は実に78gとLサイズのたまご1つ分よりも大きく、サイズ以上にその差を実感することとなった。

確かにスマートフォンでやるべきことが増えている。リモートワークが進むにつれ、社内コミュニケーションも、チャットで行うようになると、移動の隙間時間に連絡や議論を進めて時間を有効に活用するようになる。やること、特にパソコンでやってきたことがスマートフォンに移れば、画面のサイズは重要になる。

その一方で、最近の状況は、よりミニマムなスマートフォンへの回帰という気づきも与えてくれる。リモートワークが進み、出歩かなくなり、パソコンやタブレットなどがつねに身近にある環境が続いている。スマートフォンを手に取る時間が減り、その役割は最小限になっていく。

そうしたとき、iPhone SEのコンパクトさが、改めて価値として際立ってくるのだ。

その一方で、現在のiPhoneは液晶であっても有機ELであっても、画面を縁まで敷き詰めるデザインを採用している。同じデバイスであっても、ディスプレーの実装を変えることで、画面サイズを拡大できるのだ。

もちろんそのことは、価格を重視するiPhone SEの役割ではないが、秋以降のiPhoneで、サイズの小ささと画面の大きさのバランスを追求する新しいモデルが登場してもよいのではないか、と思った。

高い処理性能で動作もスムーズ

iPhone SEはA13 Bionicチップを搭載し、高い処理性能とARや機械学習を生かした新しい世代のアプリを快適に実行することができる。Apple Arcadeを含む最新のゲームも、ストレスなくスムーズに動作するし、撮影した4K動画を手元のiMovieアプリで編集しても、滞りを見せない。

手元のGeekbench 5での計測ではCPUがシングルコア1323、マルチコア2696、グラフィックスは6623。iPhone 11と同程度のスコアを発揮する。ただしメモリーはiPhone 11シリーズの4GBに対して、iPhone SEは3GBに留まる。

おそらくアップルは、iPhone SE初代モデルと同様に、向こう3年間は今回のモデルを同じミドルレンジの価格で販売し続けることになるのではないか、と考えられる。これは、アップルが第2世代のiPhone SEについて、第1世代とまったく同じことを行って作ったことから考えられる予測だ。

そうなると、3年間はiPhone SEを「現行モデル」として意識したiOSの発展が進むことになり、つねに最新のソフトウェアを利用できる最低ラインとして、維持されることになる。そうでなくても、iPhone SEの処理性能は前述の通り、4Kビデオ編集からAR、機械学習処理を快適かつ省電力でこなす実力がある。そしてこの処理性能は、別の見方をすれば、2〜3年で陳腐化するのではなく、より長く使っていくことができる。

サイズ、性能、価格のバランスから、例えばケータイを初めて持つ中〜高学年の小学生にとってもおすすめのモデルだ。確かに子ども向けケータイから持たせるという家庭も少なくないと思うが、いつかはスマホに移行する。だったら回り道をせず、初めからiPhoneに慣れてもよいのではないか。

特に、プライバシーとセキュリティを第一に設計されたハードウェア・ソフトウェアと、スクリーンタイム(アプリ使用時間)を含む親による使用状況の把握や制限(ペアレンタルコントロール)が強力に備わっている。そのうえで、より長く利用できるだけの性能を備えていることを考えると、結果として投資効率が高くなるのではないだろうか。

スマートフォンにとって重要なカメラ機能についてすでにiPhone 11を使っている身から言えば、超広角カメラがないだけで、あとは同等の性能を発揮する、と評価している。むしろ、よりシンプルな単焦点カメラのようで、素早くよい写真をスナップできる軽快さが気に入った。

光学手ぶれ補正、A13 Bionicの処理性能を生かし、逆光でも明暗共にディテールを描き切るSmartHDR、そしてシングルカメラによるポートレートモードを、外側・内側の両方のカメラで実現するなど、iPhone SE向けに新しいソフトウェアが開発されている。ソフトウェアの面では、iPhoneの中で最新の技術ということになる。

確かに、超広角や望遠といったレンズの違い、ナイトモードやディープフュージョンなど、複数のカメラを用いる処理は、iPhone SEでは利用できない。それでも、4K/60fpsとステレオ音声によるビデオ撮影やスローモーション、バーストショットなど、ベーシックなiPhoneカメラの体験はすべて実現できる。

デザイン以外、弱点がない「ミドルレンジ」

iPhone SEは、価格に対する性能のバランスが極めて高いスマートフォンであり、ベーシックなiPhoneの体験を求めるなら、十分納得できる性能を発揮してくれる。カメラや画面サイズなど、少しでも新しい体験を求めるなら、価格と引き換えに上位モデルを選択すればいい。

ハイエンドとミドルレンジの中間がない点は現在のiPhoneのラインナップの不整合性だが、それも2020年モデルが登場し、iPhone SEと同じプロセッサーを備えるiPhone 11(7万4800円~から)が、1万円程度値下げされれば、この問題も解消するだろう。

1つ弱点を挙げるとすれば、デザインだ。これもiPhone SEのコンセプト通りだが、2年前のデザインを踏襲している点は、他社がミドルレンジ向けにデザインを新たに起こしていることから考えると、競争力に欠ける部分と言える。

ただし新型コロナウイルスの影響から、指紋認証のほうが便利であるという認識が広がる中で、あまり大きな欠点としてクローズアップされないことも確かだ。

例えば5G対応のiPhoneを 2021年以降まで待つ前提に立てば、最新のプロセッサー性能を格安で手に入れられるiPhone SE第2世代は、よい中継ぎモデルとなる。