「コロナ大恐慌」の恐怖

「2020年の世界経済が大幅なマイナス成長に陥ることは明白だ。経済への影響は(1929年に始まった)世界大恐慌以来最悪になると予測している」

 

IMF(国際通貨基金)のゲオルギエバ専務理事は4月9日の講演でそう指摘した。

 

世界は大恐慌並み、あるいはそれ以上の経済危機に直面している。1929~33年の大恐慌で米国は実質GDP(国内総生産)が約3割縮小し、失業率は25%に達した。

 

その再来となるのか。

 

世界の新型コロナウイルス感染者数は4月17日時点で約217万人、死者数は約14.6万人に及ぶ(米ジョンズ・ホプキンス大学調べ)。

 

そのうち最大の感染者数、死者数を記録しているのが世界一の経済大国であるアメリカだ。まさに世界経済は震撼している。

 

あらゆる産業でダメージ

 

『週刊東洋経済』4月20日発売号は「コロナ大恐慌」を特集。1929年からの大恐慌に匹敵する経済危機で、これから先、何が起きるのか。日本企業が直面している課題を点検する。

 

日本はこれからが正念場だ。安倍晋三首相は4月16日、緊急事態宣言を全国に拡大した。それまでの宣言の対象だった7都府県以外でも感染が広がっているためだ。人々の活動を抑制することが感染防止対策であるだけに、経済の下押しはあらゆる産業に及ぶ。

 

図は日銀の3月短観を基にした業種別の業況判断DI。6月の業況見通しが「良い」と答えた企業の比率から「悪い」の比率を引いた指数だ。ほぼすべての業種でマイナス、つまり悪くなるとみている企業が多い。

 

とくに宿泊・飲食サービスの厳しさが突出する。3密(密閉、密集、密接)を避ける行動が求められている中、不特定多数の人が集まるホテルや飲食店に行く人は激減した。

業況悪化による売り上げの急減は企業の資金繰りを逼迫させる。政府は事業規模108兆円の大型経済対策を打ち出し、支えようとする。しかし、飲食店は失った売り上げを取り戻せるわけではない。新たな借金を背負っても、それを返済できる当てがないと思えば、事業継続を諦める経営者も出てくるだろう。新型コロナの影響で自主廃業や倒産となる企業が増えている。

経済の停滞は長期化が必至だ。新興国ではこれからの感染爆発が懸念されている。もし首尾よく日本国内で感染を抑え込めたとしても、海外の影響による第2波、第3波を警戒しなければならない。そうした恐怖がある限り、経済活動を活発化させるのは難しい。

企業倒産→不良債権→金融危機の懸念も

海外で感染が続けばグローバルな活動は抑え込まれ、経済は低成長を余儀なくされる。そうなると、過去に類を見ない経済対策でも支えきれず、倒産の連鎖が止まらなくなる可能性がある。それら企業に融資した金融機関に膨大な不良債権が発生することも起こりうる。金融危機につながるのを防ごうと、日銀による国債買い入れと政府による国債増発が進むだろう。

しかし、日本の公的債務の残高は先進国でも最悪の水準。コロナ危機対応で各国の財政状況が悪化したとしても、相対的に日本国債に対する信認が低下する懸念は拭えない。

日本国債への信頼が揺らげば日本経済は大きな打撃を受ける。われわれは、そのリスクさえも見据えなければならない。政府に頼らずとも、しぶとく生き残れるか。その覚悟が民間企業には求められている。