緊急事態宣言が全国に拡大

 緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大されたのを受け、産業界に警戒感が強まっている。7都府県への宣言発令で既に企業の経済活動は大きく落ち込んでおり、「追加の影響は小さい」(市場関係者)との見方がある一方、強力な外出自粛や休業要請が全国に広がれば個人消費が一段と下振れするのは必至。食品や薬を販売する店は営業を続けるものの、疲弊する地方の落ち込みが日本経済悪化への追い打ちとなりそうだ。

 

 「とどめを刺される地方百貨店が出てくるかもしれない。業界全体への影響は甚大だ」。大手百貨店関係者は、消費税増税の影響で苦戦が続く地方の同業者の先行きに強い危機感を示した。


 緊急事態宣言の拡大については、「感染者が毎日増えている状況で仕方ない」との見方が多い。首都圏を中心とする外出自粛などを受け、日本経済は大きく失速。経済同友会の桜田謙悟代表幹事は「影響がさらに深掘りされるとは思っていない」と指摘する。


 しかし今後、企業活動の停滞は全国に及ぶ。現在も需要減少で生産調整を進める自動車メーカーは「物流や仕入れ先の稼働が気掛かりで、見通しはこれまで以上に暗い」と肩を落とす。


 さらに「事務職の在宅勤務を全国に拡大する」(重工業メーカー)など、人の往来は一段と減る。人と人との接触を8割減らす東京都と同様の外出自粛要請が広がれば、個人消費が全国規模で冷え込むのは避けられない。「かなりの数の飲食店が姿を消すのではないか」(大手居酒屋チェーン)、「さらに客足は鈍るだろう」(ホテル業界関係者)などと不安は強い。


 野村総合研究所の木内登英氏は、全国で1カ月間、不要不急の消費が見送られた場合、個人消費が11.9兆円減少すると試算する。宣言が7都府県にとどまっていた場合の2倍近い規模で、日本経済に打撃となる。


 一方、生活を支えるスーパーやコンビニ、金融機関などはこれまで通り営業を続ける。ただ「マスクやトイレットペーパーなど、東京のような買いあさりが起きないか心配」(大手コンビニ)との懸念も出ている。