新型コロナに感染すると、数日で急速に肺炎症状が悪化する例があります。若い世代も例外ではありません。現時点では重症化の兆しを予想することは難しく、また重症化すると集中治療が必要となり、患者や家族と話をすることができなくなるかもしれません。
万が一、他にも多数の重症患者がいるなかで、あなたも集中治療を必要とする症状になったら、どんなことが起きるのでしょうか。
病院がとるべき倫理的な判断について提言をおこなった、生命・医療倫理研究会有志の皆さんに解説していただきます。
この記事で皆さんにお伝えしたいこと
#感染時に備えよう
#話し合おう
もしかしたら集中治療の現場で起こるかもしれないこと
ふだんの医療では、患者さんが望めば、たとえ救命できる可能性がどんなに低くても、医療従事者は最後まで治療をつくします。
しかし、いま、最も心配なのは、症状の重い患者さんのための人工呼吸器が足りなくなってしまい、救命できなくなる状況です。これは、患者さんやご家族・大切な方はもちろん、医療従事者にとっても非常に辛いことです。
現在、新型コロナウイルスによる重症な肺炎の患者さんが急激に増加しています。重症患者さんの治療をするための集中治療室や人工呼吸器、体外式膜型人工肺(ECMO:エクモ)が不足することが強く懸念されています。病床や機器の数があったとしても、これらを活用できる医療従事者が不足してしまうことも心配されています。
このまま状況が悪化すれば、命を救える可能性が高い患者さんを優先して集中治療室、人工呼吸器、ECMOなどを使用し、可能性が低い患者さんの治療を後回しにしなければなりません。こうした考え方は、トリアージと呼ばれます。
もしもトリアージが必要な状況になったら
もしもトリアージが必要な状況になってしまった場合、以下のようなことが現実になってしまうかもしれません。
・救命の可能性がきわめて低い状態の人には集中治療室、人工呼吸器、ECMOを用いた治療を行うことができなくなります。
・治療を開始した後に救命の可能性がきわめて低い状態になった場合には、治療を中止せざるをえません。
・あなたの治療を開始した後に、あなたよりも救命の可能性が明らかに高い患者さんの治療が必要になった場合には、あなたが使っている集中治療室の病床、人工呼吸器、ECMO等をあなたよりも明らかに救命の可能性が高い患者さんの治療に使わざるをえません。
これは医療従事者にとっても、大変むずかしい判断です。
#うちで過ごそう そして、 #話し合おう
トリアージが必要な状況は、患者さんやご家族にとってはもちろん、医療従事者にとってもとてもつらいことです。なんとかそのような状況に陥らないようにしないといけません。
そのために、誰でもできることがあります。それは、私たちみんなが感染しないように注意することです。十分な治療を受けられずに亡くなる患者さんが日本で発生するのを防ぐためにも、手を洗い、外出を控えましょう。
しかし、万が一感染してしまった場合はどうすればよいのでしょうか。感染し重症化すると、病状や治療のために、ご家族などあなたの大事な人とお話をすることができなくなってしまうこともあります。
あなたのことをよく知っている人がいれば、もしもあなたが自分のことを自分で決めることができなくなった場合に、あなたの気持ちや望みを推定して医療従事者と話し合ってくれることでしょう。
ですから、今のうちから、あなたがどんなことを大切にして生きているのか、どんな価値観を持っているのか、万が一の時にどんな医療やケアを受けたいと思っているのかなどを、話し合ってみてはいかがでしょうか。
生命・医療倫理研究会有志
竹下 啓
堂囿俊彦
神谷惠子
長尾式子
三浦靖彦
万が一に備えて
1.終活・エンディングノートの作成
2.財産(金融・資産・負債)
3.個人的に契約しているサービス
4.自分が管理している件
5.現在の健康状態と終末医療について
6.葬儀について
7.遺品について
8.交友関係の住所録
9.法定相続人の確認
10.遺言の作成
11.家族へのメッセージ
12.生前準備(エンディング)ノートのまとめ
【テンプレート】
・生前準備ノート(Google spreadsheet A4横サイズ:9頁)
・自筆証書遺言:テンプレ(Google document A4縦サイズ:1頁)
・別紙目録(自筆証書遺言用)テンプレ(Google document A4縦サイズ:1頁)
・簡易家系図:法定相続人確認用(PDF A4横サイズ:1頁)
1.終活・エンディングノート
【終活】
人生の終わりのための活動・・・・
自らの死を意識して、人生の最期を迎えるための様々な準備や、そこに向けた人生の総括を意味する言葉。
【生前準備ノート】(エンディングノート)
法的な効力のある遺言とは異なり、自身が死亡した時や、判断力、意思疎通能力の喪失を伴う病気やケガを負った時の為に、「個人しか分からない情報や、自分の終末期の生き方・死後の身の回りの後始末」等、希望する内容を記しておくこと。
2.財産(金融・資産・負債)
所有している銀行預金
記載事項:取引している金融機関名・支店名・口座番号・預金の種類等
保管書類:銀行の通帳・印鑑など
インターネットバンキング等のサービスを利用している場合は「IDとパスワード」を記載。
所有している株式・証券
記載事項:証券会社名・支店名・担当者・連絡先
保管書類:保有証券など
ネットサービスを利用している場合は「IDとパスワード」を記載。
加入している民間保険
記載事項:保険会社名・保険の内容・担当者・連絡先
保管書類:保険証書など
加入している個人年金
記載事項:金融機関名・年金の内容・担当者・連絡先
保管書類:年金証書など
所有している不動産
記載事項:所在、面積、抵当権の有無
保管書類:公正証書・権利証など
所有している貴金属・美術品
宝石類、貴金属(高級時計含む)及び絵画や壺などの財産価値のある美術品は「目録」を作成。
負 債
-
- 借金
記載事項:借入先、金額、返済期限
保管書類:借用書など
-
- ローンの有無
記載事項:用途、借り入れ金額、返済期限、借り入れ先、担当者・連絡先
保管書類:ローン契約書など
3.個人的に契約しているサービス
携帯電話、スマートフォン
記載事項:契約会社名と連絡先
ロックをかけている場合は解除するための「パスワード」
保有しているクレジットカード
記載事項:カード会社名、名義、連絡先
ネットサービスを利用している場合は「IDとパスワード」
契約中の有料ネットサービス
記載事項:契約先の会社名、サービス名
(動画配信サイト、電子書籍サイト、ゲームサイト等、毎月支払いが発生するところ)
各アカウントの「IDとパスワード」
定期購読中の雑誌・新聞
記載事項:契約先の会社名、新聞販売所、誌名等
無料ネットサービス
-
- メールアカウント(Gメール、ヤフーメール等)
各アカウントの「IDとパスワード」
-
- サイト・ブログ・SNS等のアカウント
(家族に見られたくない個人趣味サイト、ブログ、オタ垢については後述)
各アカウントの「IDとパスワード」
4.自分が管理している件
家庭で契約しているサービス
-
- 電気・水道・ガス等の公共料金
記載事項:契約会社名と連絡先
-
- 自分名義の自動車やバイク等
記載事項:契約会社名と連絡先
保管書類:保険証書
-
- 火災保険・家財保険・損害保険
記載事項:契約会社名と連絡先
保管書類:保険証書
-
- 飼育しているペットの情報
いつも与えているエサ、持病、行きつけの医者の情報、保険(契約会社名・連絡先)
5.現在の健康状態と終末医療について
自分の健康状態
- 持病、病歴、手術歴等
- 服用している薬
- かかりつけの病院、主治医などの情報
終末医療について
- 病名や余命の告知はするのか?
- 延命治療は行うのか?
- 臓器提供を希望するか?
- 最期はどこで看取って欲しいのか?
- ※終末期の医療について本人の意思を確かめておくと、病院側への説明にも役立ち、家族の心の負担が軽減します。
6.葬儀について
-
- 葬儀の有無
- 葬儀の形式への希望(規模、宗派、など)
- 葬儀に来て欲しい参列者と連絡先
- 遺影、副葬品の希望
- 納骨、お墓についての希望
例)海洋散骨してほしい、故郷の墓に分骨してほしい、など
-
- 供養に関する希望
例)法要は希望しない、など
7.遺品について
- 遺贈する場合は、その品物と遺贈する人や団体の名前・連絡先
- 売却できそうなものは、売却先一覧
- パソコンやタブレット等の端末デバイス内の「デジタル遺品」の取り扱いについて
(〇〇に確認してもらう、初期化して使ってよい、など)
※ロックをかけている場合はデバイスを使用するための「IDとパスワード」を記載しておく。
8.交友関係の住所録
- 知人・友人等の連絡先
住所・電話番号・メールアドレス等で一覧を作っておく。
その際、各カテゴリーに分け
(例えば、”同級生(高校)”、”同級生(大学)”、”会社”など)その中で中心的に連絡を廻してもらえそうな人に★印をつけ、
「★がついている人に連絡し、その人から連絡を廻してもらってほしい」と記載しておくと良い。
※「葬儀の際に連絡する人」「後から喪中葉書等での連絡のみ」などを併記しておくと良いでしょう。
9.法定相続人の確認
法定相続とは民法で定められた相続人です。
相続人が誰か知っておかないと「相続対策」が立てられないだけではなく、死後に発生する事務処理がスムーズに運びません。
よって、簡易の家系図などを書いておくと便利です。
10.遺言の作成
土地や金銭の相続が発生する場合は、法的に効力のある「遺言書」を作成しておくと安心です。
遺された遺族が財産の相続で、トラブルにならないように準備しておきましょう。
遺言書には「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2種類があります。
公正証書遺言とは?
公証人が遺言の法的有効性をチェックし、公証役場に保管する「公的な遺言書」の事をいいます。
プロが作成した証書なので「無効」になることはなく、また公証役場で保管するため、紛失の恐れがありません。
作成を依頼する公証人の他に証人2名と、公証人へ支払う手数料が必要です。
手数料は相続額によって異なります。
自筆証書遺言とは?
自分で作成できる遺言書。
弁護士手数料がかからず、いつでも作成・修正が自分で出来るメリットがありますが、その代わり「無効」とならないように、きちんと決められた事項、書き方を守らなければなりません。
▶自筆証書遺言に必要な4項目
- 日付を入れる。
- 本人の自筆で手書きのみ。(パソコンやワープロでの作成不可)
- 署名を入れる。
- 押印する。(実印でなくともよい)
便利な「別紙目録」を作ろう
前出の↑自筆証書遺言は「すべて手書き」で書くことが法律で定められています。
実はこの「自筆遺言書」の負担を減らせる方法があります。
自筆遺言書内に「別紙目録第一記載の~」というように記述しておけば
別に作った「目録」に細かい相続内容を書くことができます。
そして・・・何よりも助かるのは
「別紙目録」はパソコンやワープロでの作成がOK!ということ。
自筆遺言では相続人の指名を書いて簡潔にまとめ
「相続内容」は「別紙目録」に書くようにしましょう。
「自筆証書遺言」は封をしておこう
書き上げた「自筆証書遺言」と「別紙目録」はそのまま金庫へ・・・というのはオススメしません。
遺言書類は封筒に入れ「封」をしておきましょう。
これは「封をしていなかった」ことから予想される後々のトラブルを防ぐためです。
また、封がしてあった遺言が開封されている場合にも起こりうる件です↓
- 誰か先に遺言を見た者がいるかもしれない。
- 細工(書き換え)をしたかもしれない。
自筆証書遺言を勝手に開封して見ること自体は違法ではありません。
しかしながら、自筆証書遺言は必ず家庭裁判所の「検認」を受ける必要があります。
以上のような予測されるトラブルを避けるためにも
「自筆証書遺言」は必ず封筒に入れて封をし、見つけた家族は開封せずにそのまま家庭裁判所にて検認を受けるように日頃から申し合わせておきましょう。
作成者が封筒の表に「注意書き」をしたり、メモで貼っておいてもよいかもしれませんね。
11.家族へのメッセージ
公正証書の遺言内には「書けない、書きたくない」事柄があれば
ノート内に個人の名前を表記して、「メッセージ」を書いておきましょう。
個別に手紙形式にして封筒に入れ宛名を書いて封をしておけば
直接の「個人へのメッセージ」になりますね。
12.生前準備(エンディング)ノートのまとめ
今回、この10項目を『生前準備ノート』として使いやすいようにスプレッドシートにまとめました。
コメントをお書きください