回避しよう「コロナ離婚」

大変さを言葉で客観的に伝える

子どもは、お父さんから直接言われた言葉よりも、お父さんがお母さんとどんな会話をして、お互いを理解しようとしているのかをよく見て影響を受けています。お父さんとお母さんがコミュニケーションする姿を見て、子どもも自分の思いを言葉にして伝えることの大切さと方法を学んで育ちます。ですから、まずは、夫婦の会話を磨きましょう。

つい、夫婦では自分の大変さを相手もわかってくれていると思いがちですが、言葉にしなければ、伝わりません。態度で示したり、どうせ言ってもわかってくれないと諦めずに、言葉にしましょう。

このとき、コツが必要です。

ポイント1:相手に「〜して!」と指示するのではなく、自分の大変な実情を言葉にすること。

 

人は(子どもも)指示されると、自分では何も考えずに(いやいや)するので、指示されなければやるようにはならない、つまり、何度も指示し続けることになりますね。でも、実情を把握すると、解決策を本人が考え始めるようになり、結果、自ら行動するようになっていきます。

例えば、家事が大変なとき、「家事を手伝って!」ではなく、そもそもどのくらいの家事があるのかを言葉にします。ノートに書き出してみるのもいいでしょう。

「名もなき家事」といわれている部分を言葉や書き出したりすると、お互いがどの家事を担当しているのかを確認できます。すると、どちらかに偏りすぎていることも実感できるのです。

例えば、「ゴミ出し」なら、

・ゴミ箱に捨てる
・分別する
・曜日を確認して、出すゴミを選ぶ
・各部屋のゴミ箱からひとつに集める
・ゴミをまとめて集積場に持っていく
・ゴミ袋をセットする

のように、作業を細かくことばにしてみます。

そして、夫婦で客観的に状況を確認して、共有しましょう。細かい家事や子育て、仕事の大変さを想像して理解できるように話すことが大切です。夫婦で話をすれば、無駄な家事や仕事そのものを減らす、電化製品を買う、という新しい考え方や解決法も浮かぶかもしれません。

また、在宅中で仕事が大変なときは、「いま忙しいから話しかけないで!」で終わらせるのではなくて、「いまプロジェクトを任せられて、がんばり時なんだ。明日の昼までに資料を仕上げないといけないんだ」のように、「現状の大変さ」や「期間」も含めて話すことで、相手も見通しが立てられ、応援してくれるようになります。

「わかってくれているはず」「いちいち言わなくても自分ががんばればいい」と思って頑張ったのに、ある日突然、怒りが爆発してギクシャクしたり、あきらめて一切会話がなくなった夫婦をこれまでにたくさん見て来ました。

みな一様に「そのときに言ってくれればよかったのに」と言います。もめないためには、自分がつらいと感じている状況を感じたときに、客観的に相手に伝えることが大切です。

仕事のことは家庭にもち込まない、という人もいますが、ふた昔も前の話です。

いま家で仕事をしている人は、家族に仕事している姿が見えやすいとき。こんなときこそ、仕事の大変さや楽しさややりがいなども家族に話して、子どもの職業観や仕事をする意義なども自然に育めるとよいですね。仕事の大変さも家庭で話して、実情を理解し合うところから始めてみてください。

相手が受け入れやすい言葉遣いで頼る

どんなこともつい「自分ががんばればいい」「自分が我慢すればいい」と思いがちですが、これは夫婦間では間違いです。ひとりでできることには限界があり、我慢の積み重ねは疲労感や虚無感につながるからです。

人に助けを求める力、人に頼る力は大切です。お父さんとお母さんが頼り合う会話を聞いて育つと、子どもも問題をひとりで抱え込まずに、「助けてほしい」と素直に頼って解決できるようになります。

ポイント2:頼るときは、相手への要求ではなく、自分の大変さをわかってもらうこと。

「ゴミ出しくらいやってよ、何にもしないんだから」「君は1日中家にいるんだから、仕事の大変さがわからないよ」と伝えるのではなく、「これをひとりでぜんぶこなすのはつらい。ひとりではできない。助けてほしい」「明後日までに納品しないといけないから、いま集中したいときなんだ。わがままを言ってごめん。協力してほしい」

 

このように、自分の大変さを話して相手を頼りましょう。いっしょに協力して乗り越えようと相手が思えるように、笑顔で説明できるともっといいですね。

だれかを頼り、頼られることも許せるようになると、頼られる喜びも分かち合えるようになります。本来、人は、だれかの役に立つこと、応援することに喜びを感じるもの。

それは、生きるエネルギーにつながるはずです。

だから、まずは夫婦からです。頼ってみましょう。愚痴や自分の弱さを相手に見せたくないという方は、まずは実情を話すところから始められるといいですね。

心の底では、夫婦はお互いに、相手のことをちゃんとわかりたい、相手に頼られたい、相手を応援したいと思っているのですから。

私たちの世代は「人に迷惑をかけるな」と育てられた人が多く、自分がどんなに大変でもじょうずに人に頼れない、理不尽な要求でも声をあげられない思考になっています。

でも、よく考えてみると、生きているだけで迷惑はかけるものです。それを認め、自分も迷惑をかけられても許せる「お互いさま」文化が育つといいなと思います。

“ひとりじゃない”と思えると気持ちはラクになる

夫婦のコミュニケーションで大切なのは、ひとりで抱えるのではなく、ふたりでいっしょに話しながら考えること。問題を明確にして、夫婦でいっしょに解決策を導き出すことです。夫VS妻ではなく、夫婦VS問題の関係になることで、夫婦の絆も強まります。

ポイント3:相手に共感する言葉を使うこと。

ある女性は、自分の大変さを夫に話したところ、夫がはじめて里芋のお味噌汁を作ってくれたそうです。

そして、夫は「里芋の皮をむくと、本当に手がかゆくなるんだね。君はいつもこんな思いをしながら、作ってくれてたんだね。ありがとう」と言ってくれたといいます。

夫の実感から出た「ありがとう」の言葉は、お味噌汁を作ってくれたことよりもうれしかったそうです。

すぐにいろんなことを実践できなくても、「それは大変だね」と相手に共感するだけでも、相手の気持ちをラクすることはできるのです。

このように、危機を乗り越えていける夫婦は、伝え方にほんの少し工夫をしています。

 

いっしょにいるのに、パートナーが自分のことをわかってくれないと悩んでいる方は、相手に自分の大変さがうまく伝わっていない可能性があります。いっしょにいる時間が長い今の機会こそ、夫婦のコミュニケーションの取り方を見直して、子どものためにも夫婦で強い絆を結んでください。